社会人のための古典100冊チャレンジ5/100『アムリタ上・下』

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古典100冊

古典初心者の社会人が働きながら100冊選書に挑んでいます。五冊目。

最近全然本が読めてなくて、ハンターハンターのアニメばかり見ています。そういうシーズンもあります。

人生の岐路に立っている方

家族や職場の人間関係に悩んでいる方

ゆっくり自分の人生を見つめなおしたい方

におすすめの一冊です。

はじめに

まず思ったのが、高知県やサイパンに自由に滞在しに行く主人公がうらやましいということ。

普通働いていると、もちろん有給の制度とかはあるんだけど、そう簡単に長期休暇がとれない。

私も使ってない有休が20日くらいあって、会社のルール的には使っていいんだけど、どうしても周りの目というか、長期で休むとなると誰かに代わりを頼まなくちゃいけないし、何か思われるのも嫌だし、そんなことを考えていると休めない。

てなわけでこの定職に就いていない主人公と作家の彼氏がその点においてはうらやましくて、サイパンは私も行ってみたくなった。

スピリチュアルな気は私には一切ないから、何かを感じ取れるかは分からない。

というか『アムリタ』は思ったよりスピリチュアルな本です。そこもとても雰囲気があって素敵だった。

日常ものとしてくくってしまうにはもったいない刺激のある本です。

ぜひ未読の方は読んでみてください。

著者とあらすじ

▼著者
吉本ばなな
1964(昭和39)年、東京生れ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。1987年『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。1988年『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞、1989(平成元)年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞、『TUGUMI』で山本周五郎賞、1995年『アムリタ』で紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』でドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアでスカンノ賞、フェンディッシメ文学賞〈Under35〉、マスケラダルジェント賞、カプリ賞を受賞。近著に『吹上奇譚 第三話 ざしきわらし』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

▼あらすじ
妹の死。頭を打ち、失った私の記憶。弟に訪れる不思議なきざし。そして妹の恋人との恋──。流されそうになる出来事の中で、かつての自分を取り戻せないまま高知に旅をし、さらにはサイパンへ。旅の時間を過ごしながら「半分死んでいる」私はすべてをみつめ、全身で生きることを、幸福を、感じとっていく。懐かしく、いとおしい金色の物語。吉本ばななの記念碑的長編。1

教科書に載っていたから知っていた作家さんです。有名な方ですが、読んだのはこれが初めてでした。

出会いと別れ、ひとときのツアー

今の生活を、あの同居人達をひとときのツアーと思っていないといえるか?

吉本ばなな『アムリタ上』新潮社2002年34頁

主人公は、自分の母親と弟の他に、いとこの幹子、母の幼馴染の純子さんの5人で生活をしている。

OLをクビになってからは定職にもついていなくて、行きつけだったバーでアルバイトをしています。

毎日の中で確かなことなんて、あらゆる意味で何もないのだ。

吉本ばなな『アムリタ上』新潮社2002年201頁

私たちは毎日職場と自宅の往復で、当たり前の日常を送っていると勘違いしがちだけど、その日常はある日突然変わってしまうこともある。

私は社会人になってから初めてそれを感じたのが、2月に発表される定期人事だった。

当たり前に来年も一緒に働くと思っていた上司が異動になって、別の上司がやってきた。

当然職場の雰囲気も変わるし、それ以外にも後輩が辞めたり新しく別のところから異動で先輩が来たり次々に人は入れ替わっていく。

どんなに人間関係の良好な職場だってずっとは続かない。

長い人生においては「ひとときのツアー」で一緒になった人にすぎない。

少しドライな考え方ではあるけども、今一緒に働いていて楽しいならば、

それが有限ではなく来年にはみんな別の場所に行ってるかもしれないことを頭に置いておくと今をより大切に思うことができるだろう。

「他人なんだから、空港で別れてそれっきりってこともあるんだよ」と言ったとき、これは恋する男の不安なんだな、程度にしか思わなかった。でも、顔がやけに本気だったのをよく覚えている。このことだったのか、と知った。この唐突さ、このぼんやりとした喪失感、こんなことは誰と誰の間にも、いつでも起こりうるのだ。

吉本ばなな『アムリタ上』新潮社2002年79頁

サラリーマンでいる限り、突然の異動や転勤なんてあるに決まっているし、

それを分かったうえで働いているのに、いざ、人事が発表されると「まさかあの人が」ってなるのが不思議です。

唐突で喪失感もあるけど、でも仕事だから慣れてしまう部分もある。

せっかく同じ職場で働いた縁だから会いたい人とは積極的に会うようにしようと最近は思っています。

無力と決めつけるには早すぎる気もする・・・

何かしてやりたい。
どうして人は人に対してそう思うのだろう。何もしてやれないのに。

吉本ばなな『アムリタ上』新潮社2002年175

主人公は女優をしていた妹と死別している。

家族であっても他人であることには変わりなく、大切な人が今どのように思っているのかを知るすべはない。

不思議なものが見えたり聞こえたりするこの『アムリタ』の世界においても、人への分からなさ、やるせなさは、どうしても存在する。

しかし本当はきっと、そういうことがいつ、どこからはじまり、どこへ行きつくのかは誰にもわからない。笑っている本人の内側で心だけが、貧しくなる。どんどん虫食いに侵されていってしまう。

吉本ばなな『アムリタ上』新潮社2002年18頁

少し前に仲の良かった同僚が交通事故に遭い、何カ月も仕事を休むことになった。

とても心配で連絡も取っていたけれど、彼女は「大丈夫だよ」と言うばかりで本当のところが全然見えてこない。

他人のことは分からないといっても、自分にできることはないのか、と考えてしまう。

何もできることはないと分かっていても、何か助けになることをしたくなる。

人のために何かをしたくなる、これは自己満なのかもしれないけど、それが彼女の助けになることもあるという考えも捨てたくない・・・と思ってしまう。

何を感じ何を読み取るのか

「素直な気持ちを言うのはいいことだけど、でもそんな考えからはなにも生まれないよ。つらいものどうしがつらさで友達になるなんて最低よ。天気がよくて、海があって、みんな笑っているからよかった。ってことをあの時のおまえは見たじゃないの。」

吉本ばなな『アムリタ上』新潮社2002年117頁

共通の敵がいると人は仲良くなれる。

社会人になってからは、共通の上司(敵)を持つ同僚と仲良くなった。これが「つらいものどうしがつらさで友達になる」ことなんだと思うけど、でもそうじゃなくて、楽しかった思い出もたくさんある。

そこに目を向けようよ、と言われた気がして、その同僚との関係を見直すきっかけになった。

つらい経験を一緒に乗り越えた仲間は、そのつらさを慰め合うだけの存在じゃない。

その先に進むための存在でもある。

小説の中で彼らはたくさん苦しんで、つらい思いも経験して、大切な人と出会って、そして別れも経験しながら、日常を生きていく。

時にはその土地を離れて、違う時間軸で生きてみて、新しい人に会いに行き、自分と向き合う時間をつくる。

なんかそんな丁寧に自分を見つめなおす時間を最近は持てていなかったなって。

私は気になった言葉やいいと思った言葉にふせんを貼りながら読んでいますが、『アムリタ』では人との出会いや別れに関する箇所に多くふせんを貼りました。

でもきっと私以外が読んだら違う言葉にふせんを貼るだろうし、私も何年か後はまた違った場所の言葉を気に入るような気もする。

読者が何を読み取るのか、が分からない本も面白いと思います。

おわりに

古典と言っても2000年代の本なので比較的新しくて読みやすかったです。

確かに日常が描かれているだけで、特別な出来事(スピリチュアル系はひとまず置いておいて)が起きるわけではないんだけれど、

読者の人生に語りかけてくる言葉は重たくて深くて、受け止めるのに少し時間がかかりそうです。

といっても深刻すぎる感じでもなく、あくまでフランクに何のことでもないかのように語られます。

人生に迷いを感じている方、人間関係に悩んでいる方、自分に合った言葉をこの本の中から見つけてみてください。

ぜひ読んでみてね。

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さてみなさん、誰に何と言われようとも、ご機嫌で一日を過ごしたもの勝ちです。

明日も楽しく行きましょう!

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勝手に古典チャレンジを始めています。最近あまり進んでいませんが、きっかけとなった近藤康太郎さんの本もおすすめです。

古典100冊読破チャレンジ|近藤康太郎『百冊で耕す』選書を読む

古典100冊読破チャレンジ1/100『春琴抄』谷崎潤一郎 | ひのとみ書店

古典100冊読破チャレンジ2/100『風の歌を聴け』村上春樹 | ひのとみ書店

社会人のための古典100冊チャレンジ3/100『ガルシア=マルケス中短篇傑作選』 | ひのとみ書店

【100冊チャレンジ】古典初心者の社会人が読む『ソクラテスの弁明』4/100 | ひのとみ書店

  1. https://www.shinchosha.co.jp/book/135914/ ↩︎

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