スマホばかり見てしまう人が今読むべき本|『スマホ時代の哲学』を読んで考えたこと

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働く人へ

自分のミスがきっかけで大きなクレームになった

毎日仕事に行くのがつらい

自分がちゃんとできないせいで、職場に迷惑をかけている気がする

そんな時、家に帰ってあなたは何をしていますか?

私はこの前仕事でしょうもないミスを3つくらい連続でして、人に迷惑をかけているもう働きたくないという気持ちになった夜、一人でずっとYouTubeショートを見てました。

k-popが好きなんですがその関連動画を永遠にスワイプし続けた。

途中からは別に興味もない動画ばかりだったけど止められずに深夜になって、で寝た。

何の生産性もないだけじゃなくて、むしろ後悔するというか、なんでこんなことしてるんだろ、みたいな気持ちになって、逆につらくなるし、

動画を見ている間はずっとその気持ちを見て見ぬふりしている感じ。出てこないように必死に押さえつけている感じ。

『スマホ時代の哲学』に書かれていたのは、そんな自分の気持ちだった。

なんで私のしていることが作者に知られているんだろう。

でも、作者はそんな私を突き放さずに、自分もそうだと寄り添ってくれる。

いつでもどこでもスマホと共にある私たちが、迷い、間違えながら、どう生きていけばいいのか、その羅針盤であり、共に歩む仲間である、そんな本『スマホ時代の哲学』を紹介していきます。

スマホから目を離さない昏睡状態

 先行きの不透明さ、予測のつかなさに怯えながらも、その不安を見て見ぬふりでやり過ごし、自己啓発的にテンションを上げて状況変化に対応し、学び直し、柔軟に働き続ける一方で、帰宅後はスマホなどから無数の感覚刺激を取り入れて、自分を一種の昏睡状態に置く。そういう忙しなく騒がしい私たちの姿は、パスカルの批判した人たちの姿とも重なってきます。

谷川嘉宏『増補改訂版 スマホ時代の哲学 「常時接続の世界」で失われた孤独をめぐる冒険』2025年274頁

私のことかなってくらいリアルで怖いけれど、

仕事で疲れて帰ってきた日、ずっとショート動画を見ていた日、これらを言語化すると「一種の昏睡状態」となるのか、と衝撃だった。

元気な時に見れば、なぜ自らをそんな状態にしておくんだという気持ちになるけれど、その時は逆に他のことができないのだ。

三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』も問題提起のきっかけとなったのは、日々に忙殺される中で起こる「一種の昏睡状態」に疑問を呈したことだった。

正直、本を読む時間はあったのです。電車に乗っている時間や、夜寝る前の自由時間、私はSNSやYouTubeをぼうっと眺めていました。あるいは友達と飲み会で喋ったり、休日の朝に寝だめしたりする時間を、読書に充てたらいいのです。
だけど、それができなかった。本を開いても、目が自然と閉じてしまう。なんとなく手がスマホのSNSアプリを開いてしまう。夜はいつまでもYouTubeを眺めてしまう。

三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』集英社2024年16頁

先行きの不透明さ、予測のつかなさに怯え、不安を抱える私たちは、ついスマホに手を伸ばし、現実から目を背けて刺激を求める。

三宅さんは、社会人には本を読むだけの心の余裕がなかったという結論を出しています。

そして、その余裕をどう確保するのかという話が、『スマホ時代の哲学』では、できるだけ私たちが無理なく実践できる範囲で示されています。

テンションを上げる「自己啓発」への警鐘

一人一人は変化の激しい状況で生まれる不安に対処し、自分を肯定していくためにテンションを上げねばなりません。そのとき自己啓発は、タフな日々を生き抜く支えとして機能しています。

谷川嘉宏『増補改訂版 スマホ時代の哲学 「常時接続の世界」で失われた孤独をめぐる冒険』2025年258頁

「際限のない競争と変化が当然視される現代社会のしんどさをやりすごすにあたって1」私たちがよく取るもう一つの方法が、「自己啓発」です。

私も仕事がうまくいかないとき、自己啓発本やビジネス本を読むことがあります。

成功者の仕事術や、習慣、気にしないためのマインドセットなど、これらは仕事のモチベーションだけでなく、生きる気力も与えてくれると思っていました。

本書では、これらの自己啓発によって私たちはテンションを上げることで自分を肯定していると書いています。いわばドーピングですね。

こうやって言葉にすると、日々のつらい仕事を、やりたくもない仕事なのに、自分に鞭をうってテンションを上げて取り組んでいることがなんだか悲しくも思えます。

でも本当にその通りで、毎日の仕事をただ黙々とこなすだけでは心がつぶれてしまう。

だから、自己啓発本やビジネス本を読んで、意識を変えて、仕事に前向きに取り組めるようにとテンションを上げるのです。

逃げずに一度立ち止まること

私が念頭に置いているのは「動揺をなかったことにしたり、不安を忘れたりするという目的で、スマホから刺激を入れ続けることを止めたほうがいい」、あるいは、「退屈や不安、何か足りないという気分に、時々は身をさらすことをやってみたほうがいい」くらいのことです。

谷川嘉宏『増補改訂版 スマホ時代の哲学 「常時接続の世界」で失われた孤独をめぐる冒険』2025年286頁

かみ砕いて何度も説明してくれています。

変化の激しい、そしてそれに適応し続けることが求められる私たちに困難が訪れるのは当たり前です。

そんな中で、ずっとスマホを手放さないでいるのではなく、たまには、そのつらさや寂しさと向き合う孤独の時間をつくるということ。

〈孤独〉や〈孤立〉の議論については私にはあまりうまく説明できないので、本書を読んでみてください。

「エヴァンゲリオン」や「遠国日記」、ゾンビ、など哲学の本なのに親しみやすいテーマを扱うのも本書の特徴です。

特に、趣味を通じて孤独をもつ、という話がエヴァンゲリオンを通してなされるのですが、その議論が好きで、素直にエヴァンゲリオンが見て哲学を考えたくなってしまいました。

つらいことがあったとき、SNSやYouTubeに逃げることは簡単です。

だけど、それをしてばかりでは、いつの間にか心が動かなくなってしまっていることに気づくでしょう。

つらいけれど、怖いけれど、その気持ちにさらされる時間を持つことの有用性を本書はゆっくりと語りかけてくれます。

おわりに

 よかれと思ってやったことが事態を悪化させたり、傷つけるつもりがないのに傷つけてしまったりする。(中略)
 こういう惨めな不格好さは、誰しも持っている一面でしょう。私もそうです。しかし、こうした欠如や有限性は、私たちを動けなくするものなのでしょうか。むしろ、私たちを奮い立たせるものだと言えないでしょうか。今立っている場所から、あの丘の向こうが見えないことは、「もう少し先まで歩いてみよう」と誘うものではないでしょうか。

谷川嘉宏『増補改訂版 スマホ時代の哲学 「常時接続の世界」で失われた孤独をめぐる冒険』2025年313頁

自分の不完全さに気持ちがつぶれてしまいそうになる日があります。

人に優しくできない、自分に自信が持てない、迷惑をかけてばかりいる。

仕事がしんどい時、それに立ち向かうのに精いっぱいで、他のことがおろそかになっていまう。大事な人との時間も、今まで続けてきた趣味も、生活に不可欠なことだって、次第にやらなくなっていく自分がいる。

そんな不完全な自分、嫌いな自分から、たまには目を背けずに向き合ってみる。

スマホにYouTubeにSNSに逃げ続けることをちょっとだけやめてみる。

日々スマホに翻弄され、さらに疲れている人にこそ読んで欲しい一冊です。

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さてみなさん、誰に何と言われようとも、ご機嫌で一日を過ごしたもの勝ちです。

明日も楽しく行きましょう!

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本日ご紹介した本

谷川嘉宏『増補改訂版 スマホ時代の哲学 「常時接続の世界」で失われた孤独をめぐる冒険』

 最近よくあるアンチスマホの本ではなく、手放せないスマホというものと一緒に生きるにはどうしたらいいか、ということに主題を置いているところが共感をもてます。「私たちはゾンビ映画ですぐ死ぬやつみたいな生き方をしている」「哲学者だってNetflixを観るし、ドクターマーチンを履く」などユニークな章のタイトル付けをしていて面白そうだと思ったのが書店で手にとったきっかけです。

三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

 これも書店で「まえがき」を読んで大変共感したので購入しました。働いていると本が読めなくなる。時間はあるのにスマホばかりみてしまう。週5で働いて、みんな普通に生活しているの?プライベートとどうやって両立してるわけ?という疑問はまっとうです。そんな生活から抜け出したいと思いながら何もせずに働き続けている人も多いですね。

  1. 谷川嘉宏『増補改訂版 スマホ時代の哲学 「常時接続の世界」で失われた孤独をめぐる冒険』2025年274頁 ↩︎

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