同じミスを何度もしているのに全く反省してない同僚がいてイライラする。
上司が直接注意したらいいのに、全部私にやらせようとしてきてイライラする。
なんかあの人今日ずっと不機嫌でイライラしている。
もう、やめませんか?イライラするの。
私も最近イライラしていて
イライラしている自分にイライラしてきます。
今日は、私と同じようにイライラしている人が登場する小説・本をご紹介します。
ダークヒーロー的な怒りの本『QJKJQ』
ふだんなら相手にしない。でも今日は違う。
佐藤究『QJKJQ』講談社2018年84頁
わたしは、機嫌が悪い。
放課後になって、剣道部の練習に行く添田七栄を階段で待つ。すれちがいざまに首元を押さえて、壁に叩きつける。同時に、鉛筆の芯を鼻の穴に突っこんでやる。
「二度とやるな」とわたしは言う。「返事は」
実は殺人鬼である女子高生が、クラスのいじめっ子を壁に叩きつけ、鉛筆の芯を鼻の穴に突っこむ場面。
こんなことができたらいいと、何度思ったことか。
最近、同僚が重い仕事を引き継いだのが原因でずっとイライラしている。
後輩や同期には特に冷たく接する。気分の波がすごい。正直怖い。関わりたくない。
もし、私が殺人鬼だったら、彼女を脅して怖がらせたりできるんだろうか。
クラスでも目立たない子が、思わぬところでいじめっ子との立場が逆転する。見ていて爽快なそんなシーンが描かれる。
「わたしは、機嫌が悪い」
そんな風に自我を通せる日があってもいい。
会社は不機嫌な人と、ミスしても気にしない人を中心に回っている。
私は殺人鬼だ。そう思ってないとやっていけないような日もある。
佐藤究『QJKJQ』
父母兄と私。家族全員が殺人鬼の家に生まれた女子高生の話。
そして突然兄が殺され、母が消える。
殺人鬼とは何者なのか。連続殺人、大量殺人、騒動殺人を繰り返す世界でも珍しい殺人鬼の存在。そして、それをただ観察する人々・・・。
自分が見て感じてきた世界そのものが歪み壊れていく。何が本当なのか分からない。
それを自分で探していく体験ができる。現実逃避ここに極まれりという本です。
イライラした日、そんなに日常から逃避するための一冊としておすすめです。
こちらでも書いています。
佐藤究おすすめ全7作品|初心者はどの順番で読むべき? | ひのとみ書店
佐藤究さんの本大好き。
偉人も逆恨みをしている…本『ソクラテスの弁明』
私を死刑にした人々よ、あなた方は私の死刑の後すぐに仕返しを受けることになるでしょう。ゼウスの神にかけて、私を死刑にしたことよりももっとずっと厳しい仕返しです。
プラトン『ソクラテスの弁明』光文社2012年98頁
今に見てろ、と言わんばかりの強烈なセリフを死に際に残したのは、かの有名なソクラテスさんです。
「哲学」を志している人は、どこか浮世離れしていて、物事を俯瞰してみているようなイメージがありますが、
ソクラテスは自分が裁判にかけられ、自分の処遇を死刑に投票した人々に向かって、あなたたちは死刑よりもずっと厳しい仕返しを受ける、と断言します。
私も職場でひどいことを言われたり、理不尽なことをされたりしたときは、それこそ地獄に堕ちるわよじゃないですが、それなりにひどい未来が彼/彼女に訪れることを強く望んでしまいます。
私をそんな目に遭わせたことを後悔させてやる!
そのくらいの気持ちでいかないと、この国で気持ちよく働くことはできないでしょう。
プラトン『ソクラテスの弁明』
哲学の祖的存在、ソクラテスが裁判にかけられた時の弁明の記録。
弟子のプラトンによる著作なので、少し創作も入っている。
ソクラテスは聖人のような人というよりは、相手の言葉の尻を捉えて論破していく、ああ、それも言いちゃうんだ~という感じの思ったより普通の人だった。
それでいてあまり計算高くないというか言い回しや立ち振る舞いが下手というか、民衆には受け入れられずに死刑の判決が下る。
敗因は、多くの人のプライドを傷つけたから。
今も昔も、人間はプライドを傷つけられることを最も嫌いますね。
こちらでも書いています。
【100冊チャレンジ】古典初心者の社会人が読む『ソクラテスの弁明』4/100
古典を100冊読むチャレンジをしています。
古典100冊読破チャレンジ|近藤康太郎『百冊で耕す』選書を読む | ひのとみ書店
その4冊目で『ソクラテスの弁明』を読みました。
漠然とした怒りの本『火星の女王』
彼は私を誘拐した人物で、私を乱暴に扱って怒鳴りつけた人物だった。
小川哲『火星の女王』早川書房2025年256頁
でも同時に、生きることに必死で、タグレスが地球から見捨てられてしまわないためにできることを探している人物でもあった。
私は怒っていた。
何に?
ポテチやマイクにも怒っていたけど、それよりももっと違う何かに。
日々イライラしながら仕事をしていると、ふと、私の怒りはいったい何に向けたものなのかわからなくなる時がある。
仲の良かったはずの同僚と仕事上での行き違いがあり、急に嫌悪感を抱く瞬間がある。
彼/彼女と本当は仲良く仕事がしたかったのに、なぜ私は彼/彼女のことを嫌になっているのだろう。
そうさせた職場の環境を、会社というシステムを、働かなければ生きてゆけない資本主義を、呪いたくなる時がある。
直接的に自分に害を与えているものではなく、そのもっと上にある根源的な「何か」へ怒りを抱くことがある。
『火星の女王』で主人公が抱いた怒りも、自分を拉致した下手人ではなく、もっとその上にあるものに向いていた。
それは地球であり、人類であり、こうならざるを得なかった歴史に対してだった。
小川哲『火星の女王』
人間がついに火星に住み始め、火星に都市ができ人々が暮らすようになる。
地球と火星の関係は政治であり、「距離」が駆引きに使われる。
「怒り」を覚えたとき、そこから逃げ出すことも一つの手段である。
登場人物の中に「地球から逃げてきた」男が出てくる。「火星より先に人類が到達した惑星はないので、俺にはもう逃げ出す先はない1」のだそう。
私は仕事がつらい時最近は特に、カンボジアに行きたい、逃げたいと思っていたが、なるほど宇宙という手もあるらしい。
こちらでも書いています。
SFがテーマにする「宇宙での距離」はとても興味深いです。
後で後悔する系の怒りの本『おまえレベルの話はしてない』
「ならなんで負けるんだよ」
芦沢央『おまえレベルの話はしてない』河出書房新社2025年42頁
「中盤までで差をつけられてるんだから研究の差でしょ」
大島にそう言われて、僕はなにも言えなくなった。言ってはいけないことばがうかんだからだ。おまえが知ってるレベルの話はしてねえんだよ。
イライラしているとき、普段は言わないようなことを口にしてしまう。
また逆に、普段なら言わないだろうに、と思うことを言われて傷ついたりする。
信頼しているし、普段はよく話をする仲だからこそ、相手が一番嫌がる言葉を知っている。
それはすごくタチの悪いことだと思うけど、それを口にした瞬間、終わるものがあることを知っておく必要はある。
棋士という夢を追いかけてきた二人は、夢を叶えたがうまくいかない者と夢を諦めて社会的地位のある仕事に就いた者とに分かれ、違う道を歩み始める。
夢を諦めたお前には分からないだろう。
その思いの中には、今も夢の中でもがく自分をどこか情けなく思っている気持ちと、一緒に夢を追いかけていたのに、と裏切られた気持ちとが混在している。
でも、言っちゃいけないことってある。
いくらイライラしていても、不幸が続いていても、生きる気力がなくなっていても
守るべき一線は守らなければならない。
芦沢央『おまえレベルの話はしてない』
プロ棋士になる夢を追いかけていた二人の青年の話。
夢を諦めきれない者、諦めて現実的な道を行く者。
途中で何かを辞めるというのはそれはそれで勇気のいることだと思う。
だからこそ辞められない側は、自分より先に辞めたやつに、辞めることができたやつに嫉妬する。そこには羨望もある。
でも、辞めたやつを肯定することは許せない。辞めた方が正しかったなんて証明させてやるもんか、という気持ちになる。
反対に辞めた側からしても、辞めずに続けているやつにはやっぱり嫉妬や羨望がある。自分にはできなかったことだから。
それでも、辞めたことが正しかったと、あのまま続けてても先はなかったのだと思いたい。
どちらが正しいなんて考えるだけ無駄なのに、分かっていても考えるのを止められない。
そんな二人の生き様を苦しいけれど読みたい方はぜひ。
こちらでも書いています。
夢破れた者の2つの生き方『おまえレベルの話はしてない』芦沢央 | ひのとみ書店
読むのが苦しい心のうちです。
ただただ理不尽な怒りの本『ポトスライムの舟』
「失礼じゃないのあんた人が話してんのに、あたしも昔仕事の話してるときによそ見して先輩に怒られた。いや、じゃないよ。顔を歪めんなよ。あんたは失礼よ、失礼。さっき下請けとの会話なんなのよ。ちんたらすんなよ、ちゃんと下請けに伝わるように話してんの?あんたは朝のスピーチすらまともにできてないじゃない。わけがわかんないのよ、言ってることのわけがわかんないのよ!わかる?わからないのよ!」
津村記久子『ポトスライムの舟』講談社2011年124頁
ヒステリックに怒鳴り散らす人がいることに私はいつも驚きを隠せません。
でも、その人はその人でそれが正しいと思っているのだし、その人なりの論理や正義があるということが、私は怖いです。
職場が不機嫌な人を中心に回っている限り、離職するのは仕事ができる人ばかりで、環境は良くならない。
誰もが不機嫌な人に配慮して、調整して、機嫌を取る。
そんな状態が長く続くとそれが当たり前になってしまうけれど、きっとそうじゃない職場も当たり前にあるはず。
多分私は、不機嫌があまり顔にでないタイプだから余計にそう思う。自分ができることは、人もできるはずだとそう思ってしまう。
『ポトスライムの舟』に収録されている「十二月の窓辺」ではブラックな職場に辞表を出すまでの主人公の葛藤が描かれます。
人のことだと、そんな職場早くやめちゃえばいいのにって思うんですけどね。
津村記久子『ポトスライムの舟』
「ポトスライムの舟」と「十二月の窓辺」二篇を収録。
「ポトスライムの舟」では、ただ生きるために低賃金で働いていた主人公が、一年分の給料で世界一周に行くことができると気づく話。
ああ、あのポスターね。有名な世界一周に170万円くらいで行けるやつ。
私も仕事がしんどい時に、この本きっかけで世界一周に行こうとしていた時期がありました。
自分を変えようと思ったのです。世界を旅して。
「維持して、それからどうなるんやろうなあ。わたしなんかが、生活を維持して2」という言葉は悲しいけど共感する人が多いのではないでしょうか。
なんでつらい仕事を続けてまで生きているんだろう。
私たちにはちょっとしたご褒美が必要です。
何のために働くのかなんて大きな野望みたいのはなくていい。頑張った先にある手の届くご褒美。
世界一周に行くと思うだけでなぜか力が湧いてくる。
実際に行っても行かなくてもいい。
そうやって少しずつ働く世界の見え方をよいものにできないか、考えています。
おわりに
アンガーマネジメントという言葉をよく思い出します。
イライラして泣きそうになったときは、7秒くらい、いやもっと待つようにしています。
でも、それでも消えない怒りがあります。
これどうしたらいいんでしょう?
その場を離れても、家に帰っても、朝起きても、まだ覚えている。怒っている。
それほどの怒りは、もう取っておいてもいいのではないでしょうか。
無理に消す必要はない。嫌な思い出を記憶から消し続けていると、私が働いた時間の記憶がほとんどなくなってしまいそうで、
そうすると週5日、一日8時間以上働いている私たちの記憶はほとんど残りません。そんなの悲しくないですか?
だけど、イライラしているときは本が読めない。内容が入ってこない。
やはり忘れるしかないんでしょうか。
1つ方法があります。
それは、「逃げる」ことです。
ということで、次回、「逃げる」本をご紹介するつもりです。
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さてみなさん、誰に何と言われようとも、ご機嫌で一日を過ごしたもの勝ちです。
明日も楽しく行きましょう!
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