『イクサガミ』に出てきたカムイコチャをきっかけにアイヌ民族に興味をもって読んだ本です。
一冊読んだだけで知ったつもりになるわけではありませんが、知らなかったことが多くて備忘録というような形になりました。
読んだ本の内容はメモしておいても数年後にはほとんど覚えていないことが多いです。
そうならないように始めたブログなので、何度も見返せるように、記録しておこうと思います。
最近はゴールデンカムイなど作品の中でアイヌが取り上げられることも多く、アイヌに興味をもつ人が増えてきているような気がします。
何がきっかけでも、知ろうとする気持ちに嘘はありません。
私も何か作品を読んで気になったテーマについてはちょっと掘り下げて本を読んでみたりすることがあるので、
ただのミーハーなような気もしますが、そうやって少しずつ楽しく知識を身につけられたらいいと思っています。
ここでは私が、読んでいてなるほど、と思ったところの引用とその感想を綴っています。
あらすじ
▼あらすじ 最新アイヌ学をコンパクトにまとめた1冊!ウポポイ開業から4年、先住民族アイヌとその文化への関心が高まっている現在、文化人類学、社会学、ジェンダー研究、マイノリティ研究、言語学、口承文芸学などのさまざまな分野研究者を結集。アイヌ観を塗り替える試み。オールカラー写真、イラスト、図像満載!!(最新アイヌ学がわかる – 株式会社エイアンドエフ | 世界のアウトドア用品を45年輸入販売より抜粋)
カラーの写真やイラストも多くてとても読みやすかったです。いろんな人のアイヌへの視点や研究が書かれているので、アイヌについての入門書としてもおすすめです。
アイヌは帝国を築かない
なぜアイヌ社会がもっと階層的にならなかったのかという非常に難しい疑問が生じる。(中略)これに関して我々はグレーバーとウェングロウが「万物の黎明」という最新の著書で提起した仮説を考慮しなければならないだろう。それは、人間というものは可能ならば社会の階層化を避けようとする、ということである。
佐々木史郎、北原モコットゥナㇱ監修・執筆「最新アイヌ学がわかる」2024年27頁
アイヌ民族は、国土創造や人類誕生といった神代の物語から家系の来歴談まで全て口伝によって行ってきた。そこには統一的な支配者もおらず、国家形成や民族間の戦争の歴史も文字に書き残す必要がなかった。
佐々木史郎、北原モコットゥナㇱ監修・執筆「最新アイヌ学がわかる」2024年121頁
日本の歴史でも農耕が始まったあたりから人が人を支配し始めて、次第に貴族と庶民という構図ができていく。
江戸時代には身分制度ができるし、人を縦に並べることはわりと世界の歴史の中で見られることなんじゃないかと思います。
だけどアイヌはそうはならなくて、統一的な支配者はいなかったらしいです。
改めて言われると不思議な感じがしたし、支配者がいないから、その支配者の正統性を文字や文献で残しておく必要もなく、基本口伝で伝えられたということも理解できた。
もう一つ、「人間というものは可能ならば社会の階層化を避けようとする」という考え方は面白いと思いました。
その根拠は原本をあたらないと分かりませんが、階層化を望んでいるのは、その世の支配者だけなのかもしれません。
でも結局その支配者によって階層化が進むんですね。
遅れた民族という認識
土地を所有する権利は、その土地を「効率的」に利用したものに認めるという考え方である。それは、つまるところ農地化のことであり、狩猟漁労採集を生業とした先住民族は、その土地の所有者と見なされなかったのである。
佐々木史郎、北原モコットゥナㇱ監修・執筆「最新アイヌ学がわかる」2024年34頁
人間の社会は狩猟→遊牧→定住農耕→産業という順で単一的に進化するという思想が展開した。(中略)アイヌの暮らしは、いずれは開かれ改善されるべきものと見られてきた。
佐々木史郎、北原モコットゥナㇱ監修・執筆「最新アイヌ学がわかる」2024年44頁
確かに私たちの中には、(今までそう習ってきたからっていうのがあるからだと思いますが)狩猟採集の時代から定住農耕の時代へと進んできたという認識が強くあるように思います。
つまり、あくまで定住農耕は狩猟採集の次のステップであると。
だからこそ狩猟や採集、漁労で生活をしていたアイヌを未開の民族であるととらえ、開かれ改善されるべきと和人が考えたということです。
でも必ずしもそうではなかった。
近代の日本がアイヌにしたことは植民地化であり、その怨恨は今も残っていることを私たちは知っておくべきでしょう。
マイノリティを知らないマジョリティ
私自身、さまざまな依頼が来るなかで「先住民女性作家」というチェックボックスにチェックをするために選ばれたんだろうと感じることが、特に国内では少なからずある。
佐々木史郎、北原モコットゥナㇱ監修・執筆「最新アイヌ学がわかる」2024年115頁
先住民族、マイノリティが取り上げられることが増えてきています。
私はそのことを、マイノリティが個性として認識されるようになってきたからだと思っています。
例えば私が今回見たドラマ・小説『イクサガミ』に登場するカムイコチャは、アイヌ出身であることで他のキャラクターにはない個性を獲得しているし、ビジュアルやその戦い方にもルーツがあって説得力もある。
現代の何も知らない私たちがメディアでアイヌを目にしたら、北海道の個性的な民族出身の人、くらいにしか思わないかもしれません。
そこに差別はないが、知識もない、ということは、私は問題になり得ると思っています。
これは私たちがマジョリティに属しているからで、自分がマジョリティであることを分かっていない人もまた多いように感じます。
マジョリティ自身を学ぶ、マジョリティの画一的なイメージが、実は作られたものだということに気づいてゆく。それが学術的にも意味があるし、偏見の解消にもつながると思います。
佐々木史郎、北原モコットゥナㇱ監修・執筆「最新アイヌ学がわかる」2024年14頁
ある人が経験する障壁を、認識することさえないのがマジョリティの特権性である。
佐々木史郎、北原モコットゥナㇱ監修・執筆「最新アイヌ学がわかる」2024年155頁
マイノリティを学ぶことで、自分がマジョリティであったことに気づく人は多いでしょう。
マジョリティに属する人々は、自分がマジョリティであることを知りませんが、マイノリティの人は自分がマイノリティであることを日々痛感しながら生きている。
障壁がある人とない人がいるというわけです。
障壁がない人からすれば、障壁があるということ自体を理解するのが難しいし、きっかけがなければ気づくこともない。
それが私たちのように思います。そしてこれはとても怖いことです。
今も私が気づいていないことがたくさんあるのかもしれない。
知らないということはとても怖いことなのです。ではどうすればいいのか。
私は少しでもこうして本を読むことが気づくきっかけを与えてくれるように思います。
少しずつですが、こうして興味をもったことは掘り下げていければいいと思っています。
『イクサガミ』小説を読む前にドラマを見るべき圧倒的1つの理由【あっさり】 | お金と本屋
とはいえ『イクサガミ』に出てくるカムイコチャすごくかっこいいです。




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