みなさんこんにちは!
今回は、第71回江戸川乱歩賞を受賞した『殺し屋の営業術』という本をご紹介します。
私は仕事で営業をしていたので、タイトルに惹かれて購入しました。
それだけではなく殺し屋ものということで、まあ外れないだろうと…
営業マンが主人公のこの小説
営業さんはもちろん、天職にまだ出会えてない人、天職とは何か見当もつかない人にもぜひ読んでほしいです。
本書の主人公の天職は裏社会にあったようですが
もしかしたら、あなたの天職も本同じように表の社会には存在しないのかもしれませんね。
どうりで見つからないはずだ…
ほんのりネタバレありなのでご注意ください✨
ありそうでなかった殺し屋×営業職、おおまかなあらすじ
ほんとに社会人になってからお仕事小説がとっても面白く読めるようになりました。これが社会人になってよかったことの一つです。
さて、本書の主人公である鳥井は、いくつもの会社でトップセールスとなってきた凄腕営業マンです。
この鳥井、契約成立のためには手段を選びません。
顧客から要望があれば深夜11時のアポイントにだって駆けつけます。
そして、深夜に商談に出向いた鳥井はそこで殺し屋の仕事現場に遭遇します。
目撃者となってしまった鳥井は命の危険を感じるが、そこでこう考える「そう、これは商談なのだ――死なないための」
そして鳥井は今までに培った最強の営業術で裏社会を戦っていくのです。
あった、こんなところにやりがいを感じる仕事が!そりゃ見つからないわ
結論から言うと、鳥井の営業術は殺し屋業界で通用する。
それだけでなく殺し屋たちの暴力を凌駕していく。
普通に戦ったら負けるけど、話術や心理、論理を駆使して、「頭」で勝っていく様というのは、ほんとうにしびれます。私は漫画でもそういうのが好き。
でも鳥井はそれだけじゃなくて、向いていたのだ、裏社会に
鳥井はいくつもの会社でトップセールスだったと紹介したけど、実は彼はけっこう転職している。
普通会社のトップセールスとして活躍していたらそれなりの給料がもらえて、出世もするから働きやすくなるはず。
でも彼に限っては、その異常なまでの成績と、時代に逆行する働き方から、まわりに不審がられてしまう。
「鳥井くんって、生きていて楽しいの?」
「お前…そんなに働いて虚しくならないか?」
数年もしたら居心地が悪くなって、でも自分にはどの会社でも生き残れる営業スキルがあると来たら、まあ転職するのは分からないでもない。
鳥井は十数年も営業成績一位を取り続けて、何百人の同業者からの賞賛の拍手を浴び続けてもなお、生の実感を得ることができなかった1、と語る。
圧倒的な仕事をこなし成績を残しながらも、その仕事にやりがいを見いだせなかったのだ。
仕事をするうえで、向いている仕事が、好きな仕事であるとは限らないと思っている。
得意と好きは違うことがある。悲しいけど。
こういう場合、得意な仕事でバンバン稼ぐのか、いやそれでも好きな仕事を取るのかは人によって様々だと思う。
微妙だよね、得意な仕事で稼いでいてもストレスが鬼たまるとか、成績をあげても楽しくないのなら、しんどいのが勝つ気がするし、好きな仕事は楽しいしやりがいがあるだろうけど、お金稼がないと食べていけないからね。
だから鳥井が裏社会の営業として得意を生かしながら、かつスリルという楽しさを見出したことで、得意と好きが一致したこと、そのこと自体はうらやましいと思った。(もちろんやばいことだけどね)
どうだろう、彼は得意な仕事だがやりがいが見いだせない堅気の仕事を続けるべきだったのだろうか?
それとも得意かつやりがいを感じる仕事だけど殺し屋という非道な職業でよかったのか。
彼は後者を選んだけど、自分だったらどうだろう。
やりがいというのはそれだけ人生を豊かにしてしまうものだしね、うーん。
また、もう一人、裏社会での鳥井のライバルとなる女性が出てくるが、彼女は仕事が得意だが好きなことは別にあるタイプ。
仕事をして得た報酬で好きなものを買って愛でる。こっちタイプの人の人生も楽しいと思う。推し活みたいな。
最初に登場した時、彼女にはとても勝てない!そう思うほどの強敵だと思ったけど、考えてみると得意でかつ好きな仕事として殺し屋の営業をやる鳥井には勝てない運命だったのかもしれない。
やはり得意×好きな仕事は最強なのか。
じゃあ、私にとっての得意×好きな仕事はどこにあるんだろう。いくら払ったら教えてもらえるの~
天職とは人それぞれ、フィクションだからこその作者からのメッセージ
最後に、今回タイトルに~末路(意:盛りを過ぎたあと、なれのはれ)と書いた、
もし自分がこの小説世界の住人だったとしたら、数々の会社でトップセールスとして活躍していた営業マンが、殺し屋の仲間として策略を巡らせ人を殺し金を稼ぐ営業に堕ちた話に感じるけど、
小説の読者の視点から見ると、得意だけどやりがいのない仕事を続け、死ぬほどではないから生きているような状態から、得意と好きが掛け合わされた「天職」に出会い、生き生きとした人生を送ることができるようになったという話になる。
これはフィクションだから私は後者の話として楽しく読みました。だからタイトルは間違ってますね。
江戸川乱歩賞をとっているからというわけではないけれど、読んで損のない小説です!
みなさんもぜひ通勤時間などのお供に読んでみてくださいね。
ではまた次の本にいってきます!
- 野宮有『殺し屋の営業術』講談社134頁、二週間で二億円を稼がなくてはいけないという強烈なノルマが課せられてなお、その状況を楽しんでいる自分に気づき始めるシーンより。いいですね。 ↩︎

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